ネット上に悪意ある書き込みをしたと推測される元社員への対応

近年、顧問先様からの「元社員と思われる人からのネット上の書き込み(誹謗中傷)」について、相談を受けることが多くなっています。会社に対し不満を抱く元社員は、匿名性の高いネット上に会社への不満を書き込んで発信することができてしまいます。会社にとっては企業価値を低下させる内容の発信は、大きな被害が生じるリスクがあります

そこで、会社としてどのような対応がとれるのかについて、以下解説していきたいと思います。取り得る手段としては、
◆削除依頼
◆投稿者に対する責任追及

が考えられ「投稿者に対する責任追及」は、
民事上の損害賠償請求及び刑事上の被害届提出・告訴(名誉毀損罪・信用毀損罪・業務妨害罪等)があります。責任追及を行うにしても、「元社員と思われる・・・」は、あくまで推測のため、投稿者が誰であるか本人の特定が必要となります。(刑事上の手続においても、投稿者が特定できていない場合には警察が受け付けないことが非常に多くなっています。)。

相手方の特定としては、プロバイダ責任制限法に定める発信者情報開示請求という手続を利用することになります。

開示請求を行うには、
1-不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(特定電気通信)であること、
2-権利の侵害が明らかであること(権利侵害の明白性)、
3-開示を受ける正当理由があること、
4-通信記録(ログ)が残っていること(4の観点からは書き込まれてから早期に行うことが重要です。)が必要です。

この開示請求は裁判を使わなくても可能ですが、実際に開示されるためには裁判が必要となることが一般的です。この、発信者情報開示請求によって発信者が特定された場合には、その投稿者に対する損害賠償請求を検討します。この損害賠償請求にあたっては、インターネット上への情報発信により損害が生じたという、相当因果関係が必要です。

損害賠償請求額は、情報発信の内容や、それによりどのような損害が生じたか等により、一般的には逸失利益や、情報開示請求等も含めた調査費用等を請求することとなります。弁護士費用についてはその事案等により大きく異なりますので、ご相談される弁護士に確認されることをお勧めいたします。

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